もう大分前ですが、チェスでカスパロフがディープ・ブルーに負けたことが話題になりました。チェスのソフトも30年くらい前は、めっちゃ弱かったのですが(私が10万円くらいで購入した市販のものは弱すぎて使うに耐えなかった)、その後急速な進歩を遂げ、最高峰のものは世界チャンピオンレベルにまで強くなりました。
将棋ソフトの開発は、チェスよりさらに遅れていましたが、やはりこれも急速な進歩を遂げ、市販のものですら、将棋アマ二段くらいの当方の実力では、とても勝てないほどになりました。とは言え、少し前に渡辺明竜王が、当時の最強将棋コンピュータ・ソフトのボナンザに余裕で勝ちました。それについて書かれた本が出版されています。↓
ボナンザvs勝負脳 価格:720円(税込、送料別) |
現段階では、日本将棋連盟のトッププロが負けるような将棋コンピュータ・ソフトはおそらく無いものと思いますが、10年20年先は何とも言えないでしょう。
将棋やチェスのように、完全情報で論理性のある閉じたゲームでは、コンピュータ・ソフトの研究・開発は進展しやすいのですが、これがランダム・ウォークと呼ばれる投資系ゲームでは、未来予測に論理性を持たせることが極めて難しく、勢い過去のデータに基づく統計に頼らざるを得ない部分が大きいです。
しかし、その過去の統計が、どのくらい信用できるものかというと、当方の「あてずっぽ」によれば、甚だ信用するには覚束ないといった類のものです。なぜなら、過去のデータに論理性を見つけることが難しいので、たとえ過去にある傾向を示していたとしても、それはあくまで過去の気まぐれ以上のものにはならないと思うからです。
ただ、100%ランダム・ウォークかと言えば、そうでもない部分もあり、その「ランダムウォークの崩れ」を突くには、コンピュータによるシステム売買や自動売買よりも人間のパターン認識のほうが優れていると思われるので、裁量手法を磨いたほうが近道であると思います。参考までに下記書籍の「楽天ブックス」における当方の評価文を掲げます。
使える売買システム判別法 価格:2,940円(税込、送料別) |
この本は、システムの内容そのものには言及せず、システムをブラックボックスと措定して、それぞれのシステムの主にフォワードテストの結果からそのシステムを分析評価する方法について論じている。投資系ゲームと統計学の融合という点で、大変興味深いアプローチであるし、きちんとした筆致で良く書かれていると思う。
しかし私見では、そもそも投資系ゲームにシステムを適用すること自体にやや無理があるように思う。したがってそもそもあまり信用できないシステム群の良し悪しを過去の結果から統計的に分析評価することが、どの程度の信頼性や有効性があることなのか甚だ疑問に思う。
トランプのブラックジャックやビデオポーカーなどの閉じた体系では、不完全情報ゲームといえどもシステム的にかなり機能する。また、閉じた体系であると同時に完全情報ゲームであるチェスや将棋のコンピュータ・ソフトは、昨今、人間のトップクラスの実力者といい勝負になってきている。
しかし、投資系ゲームはランダムウォークとも言われ、不完全情報ゲームである上に、開いた体系であると思われる。このような極めて不確実なものの場合は、システムではなかなかコントロールしきれず、むしろランダムウォークの崩れ(一時的な規則的と思われる動き)を突いて、人間のパターン認識を活用したほうが多少なりとも信頼できるのではなかろうか。
この本は、学術的には大変面白いアプローチではあるが、実践において本当に役立つかどうかというと、現段階では疑問に思う。物事を自動的に制御したいという人間の夢がコンピュータやロボットを生み出したので、FXや株などの投資系ゲームにも応用したいというのは知的興味としては十分に理解するが、何分にも相手が厄介な代物であるように思う。
システムトレードそのものにしてもシステムの評価にしても、投資系ゲームで勝つための理論としては、まだまだ端緒についたばかりの研究分野といった気がする。とはいえ、裁量でもなかなか勝てない分野であるので、アプローチ自体は興味深いし歓迎するところである。特に日本においては新機軸のアプローチであると思うので、今後も動向を見守っていきたい。
2010/10/17 追記 参考他者ブログ記事


